春日杉・百萬塔の河合木工
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奈良銘木・春日杉

悠久の歴史を刻む、春日杉。

春日山の来歴、木目の見方、材の希少性、研究資料、お手入れ。作品帖の言葉を手がかりに、春日杉を一つずつ紐解きます。

春日杉の流れるような杢と自然な輪郭を生かした結界
結界。木の輪郭と杢を生かした河合木工の作品。

春日杉とは、どんな木か。

春日杉は、奈良・春日山に由来する杉材の呼び名です。作品帖では、秋田杉・吉野杉などと同じように産地の名を冠した銘木として紹介しています。河合木工にとっては、土地の来歴と、一点ごとに違う木肌の表情をあわせ持つ、大切な素材です。

作品帖が見どころとして挙げるのは、木香、杢目の細やかさ、さまざまな年輪のあらわれ方。希少さだけでなく、実際の作品のどこに目を向けると楽しめるか。その順にご紹介します。

春日山と春日大社。守られてきた森。

春日山は春日大社の神山として守られてきました。文化庁の解説では、841年に狩猟と伐採が禁止され、1924年に天然記念物、1955年に特別天然記念物に指定されたとされています。

参考:文化庁「春日山原始林」 ↗

春日山原始林は、杉だけの森ではありません。県の保全計画は、都市の近くに残る貴重な照葉樹林として、その自然と文化の両面を捉えています。1998年には「古都奈良の文化財」の一部として世界遺産に登録されました。伐採禁止の歴史は、それよりはるかに古いものです。

森が長く守られてきたことと、今後も森が更新していくことは、別々に考える必要があります。県は次の世代へ継承するための保全を進めています。春日杉を知るときには、木材の美しさとともに、その背景にある森にも目を向けたいと考えています。

参考:奈良県「春日山原始林保全計画」 ↗

木目・杢・年輪を見分ける。

木の表面に見える模様は、切り出す向きによって変わります。木の幹を横切る面は「木口」、縦に切った面には「柾目」「板目」があります。これは春日杉に限らず、木材を見るときの基本です。

参考:森林総合研究所「木材の不思議な世界」 ↗

木口を見る

幹を横切った面。年輪の連なりが現れます。作品では、面の向きや削り方によって、曲線として見えることもあります。

縦の面を見る

まっすぐ並ぶ線、山形に広がる模様。切り出し方の違いが、一つの材から異なる表情を引き出します。

作品全体を見る

色の濃淡、線の揺らぎ、自然の輪郭。河合木工の作品写真を見比べると、同じ作品名でも一作ずつ印象が違うことがわかります。

年輪の細やかさは作品帖が大切にしている見どころですが、写真に見える線の数だけで、その作品の材の樹齢を決めることはできません。木のどの部分を使ったか、どの方向から見ているかも関わるためです。

一つの材の表情を、かたちに生かす。

百萬塔の屋根と台座に現れる春日杉の年輪
百萬塔。屋根の曲面と台座で、木目の見え方が変わります。

百萬塔では、重なる屋根の縁と丸い台座に、木目の曲線が現れます。結界では、幅のある材面に流れる杢と自然な輪郭を眺められます。花生では、縦に伸びる木目と花の線の組み合わせを楽しめます。

作品帖にある「自然の味わいを生かすように一点一点」という言葉は、河合木工の作品を見る手がかりです。形だけで選ばず、気になる一作の木目や色も確かめてみてください。

春日杉を使った作品を見る ↗

なぜ、入手が難しいのか。

作品帖は、伐採が制限された森に由来し、利用できる材が限られることを、春日杉の希少性の背景として説明しています。現在、河合木工でご案内するのは、受け継がれてきた材から制作した現存作品が中心です。

同じ姿の作品でも、木目や色まで同じものを揃えることはできません。材種、寸法、状態、数量は一作ずつ確認してお伝えします。森の倒木であれば誰でも採取・利用できる、という意味ではありません。

河合木工のすべての作品が春日杉とは限りません。ご希望の作品について、材種と現物の写真をご確認ください。

材質の研究と、わかっている範囲。

春日杉は、見た目だけでなく材質や耐朽性についても研究の対象になってきました。奈良県森林技術センターの研究報告目録には、次の3報が掲載されています。

  • 1975年『春日杉について』
    今村祐嗣・小野広治・山口和道・村田武彦。No.6-2、73–80頁。
  • 1975年『春日杉の耐朽性について』
    中村嘉明・花尾英男。No.6-2、81–85頁。
  • 1978年『春日杉の材質特性(続)』
    今村祐嗣・小野広治・山口和道・村田武彦。No.7、45–50頁。

参考:奈良県森林技術センター「研究報告 No.1〜No.10」 ↗

ここで確認できたのは書誌情報です。原報本文の試験条件や数値は未確認のため、「通常の杉より何倍も丈夫」「水に強い」といった性能の断定には用いていません。また、研究された試験材の結果が、そのまま個々の作品の性能を保証するわけではありません。

長く楽しむためのお手入れ。

作品帖では、春日杉の風合いを損なわないよう「磨いたり塗ったりしないでください」「ほこりを払うだけ」とご案内しています。素材の表情を大切にする、河合木工の春日杉作品についての基本方針です。

ただし、花生や器は、仕上げ・構造・用途によって扱い方が異なります。花生に直接水を入れてよいか、器をどのように使えるかは、現物を確認してご案内します。汚れや傷が気になるときも、研磨や塗装をする前にご相談ください。

よくあるご質問。

春日杉なら、どれも同じ木目ですか?

同じではありません。作品帖の写真でも、色や線、輪郭に違いが見られます。ご購入時には現物の写真でお確かめいただけます。

春日杉と吉野杉は同じですか?

どちらも産地に由来する呼び名ですが、指す地域が異なります。河合木工では、個別作品の材種を確認してご案内します。

同じ作品を継続して追加注文できますか?

現存作品を中心にご案内しています。同じ仕様や木目での追加製作・継続供給はお約束していません。

木目を確かめて、一作を選ぶ。

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